グローバル・コモンズを分かち合う
万人のために不可欠な物資とサービスへのアクセスを保障することは、公益に仕えるグローバル経済を確立するために大いに役立ちますが、本質的に公平で、環境的に持続可能であり、完全に包括的な経済的骨組みを確実にするためには不充分です。
国家同士がグローバル・コモンズをより公平にそして持続的に分かち合えるように、新たな経済的取り決めはまた何十年もの民営化、地球の天然資源(水、石油、ガス、鉱物など)の企業の支配と不当利得行為を翻す必要があります。資源が再生し、廃棄物と汚染物質が再吸収され得る50%増しの速度で人類全体が既に消費し汚染している時、国際コミュニティにとってこれは画期的なチャレンジを呈します。
明らかにこのような事態が永久に続くことは不可能です。そして公衆の圧力あるいは激化する生物学的破局によって最終的に政府は世界を分裂したままにして置くか、むしろそれを分かち合うための協力的戦略のために現在の経済論理を放棄するよう強いられることになるかもしれません。そのような推移を首尾よく交渉するには二つの基本的前提条件が必須となるでしょう。第一に、経済成長を拡大し利益を最大限にするための終わりなき衝動の代わりに、そして経済政策の目標は全てを「更に」消費することを促進するよりむしろ健康と幸福を最大限にし、万人のために「十分」を保証するよう国々が目的とする、持続可能な充足性へ転じねばなりません。
第二に、天然資源は私たちの分かち合うコモンズの一部であるという認識を国々は集合的に明確に供述せねばならないでしょう。そしてそれ故、それは未来世代及び万人の利益となる方法で管理されるべきです。この重要な再発想は今日の民間と国家所有権モデルから離れ、非所有権と信託統治に基づいた新たな形態のグローバル資源の管理へ転じることを可能にするでしょう。
持続可能な世界への移行
天然資源を分かち合うための新たな統治体制には多くの形態があり得ます。例えば、国際法に既存する「人類の共通遺産」の原理に沿って、海洋や大気のように本質的に真にグローバルな多くのコモンズが世界公益信託に保有され、選ばれた代表者あるいは再生された国連機関により管理されることが可能でしょう。各政府にとってもうひとつの選択は、彼らの裁判管轄内で保有される天然資源の統治権を維持することですが、それらの資源の持続可能な使用の調和的国際プログラムと国の余剰の分かち合いにもまた同意することです。
そのような経済的取り決めは限りある惑星の限界内で各人がニーズを満たすことが出来るよう、政府が世界の消費レベルを連続的に減らし同等にすることを可能にするかもしれません。これを達成するには材料スループットと炭素排出量の(国家間の)レベルの合致が最終的に達成されるまで発展途上国が自国の資源の使用を増やし、過剰消費する国がそれを著しく減らすことを先導していかねばならないでしょう。同時に、国々の資源消費の全体的割合への連続的でより厳しい上限が、世界の消費パターンを徐々にかつ断然的に持続可能なレベルまで減少させることを確実に成し得るでしょう。「正当な分け前」的な生態学的エコロジカル・フットプリントへのこの劇的転換を促進するためには、非再生可能燃料への依存性を減らしクリーンエネルギーの代替源へ大いに投資することにより、低炭素開発の戦略を取り入れることを国際コミュニティーはまた必要としています。
天然資源を分かち合うためのグローバル機構のどのような形態の実施の意味合いをも過小評価されるべきではありません。例えば、協力的な資源管理の時代への移行は全レベルでのより包括的統治、世界的機関の民主化(国連を含む)、そしてグローバル・ノースからグローバル・サウスへの力関係の転換にかかっています。今日、ますます低下する国際協力を前提とし、秩序ある移行が必然的に国連加盟国により交渉されまとめられねばならないでしょう。世界の指導者たちは海外政策を特徴付ける自己権益と激烈な競争をやがて越えて行かねばなりません。彼らは健全な生態系と社会正義を脇へ押しやり、短期間での事業利益を優先する支配的経済モデルを維持するために激しく投資しています。
すなわち、僅かな資源を巡る終わりなき消費と競争の上に構築された経済システムの運営について政府が再考することを待つことは出来ません。世界環境及び資源安全保障危機への解決策は、真に協力的な分かち合いの世界をつくる障害となる企業と政治勢力を克服するための協調的取り組みを持って、市民社会の活発な参加によってのみもたらされ得るのです。
上記は「グローバルな経済の分かち合い入門」からの抜粋です。
フォト・クレジット:JazzmYn*, フリッカー・クリエィティブ・コモンズ