世界の食糧を分かち合う
全世界の人口の栄養必要量を充足させるための十二分の生産物があるにもかかわらず、生命を脅かす食糧緊急事態は多くの発展途上国を破壊し続け、そして毎日少なくとも8億4千2百万人が飢えに苦しんでいるのです。
グローバルマーケットにおいて広範囲な栄養不足が大きな余剰食糧と共存する時、明らかに食糧制度は基本的レベルで分かち合いの原理の逆へ働いています。最も基本的観点から豊かな世界での食糧の分かち合いは誰一人として餓死することを許さず、万人が安全で栄養価の高い食糧が十分に適正価格で保証されることを確実にする政府の優先事項の再調整を要求する国々という家族を示唆しています。
しかし飢餓の不祥事は、全レベルで危機に瀕する壊れた食糧システムの最も酷い例であるにすぎません。工業型農業の営みは人間の生活が依存する天然資源をかなりの割合で低下させており、そして水不足、化石燃料の枯渇、天候異変、環境的劣化の結果として、未来の要求を充足させるための膨大な挑戦へ政府は直面しています。いくつかの推計によると、グローバル化された工業型食糧システムは温室効果ガスの排出の半分以上の原因となっています。環境上破壊的モデルへの農業の目覚ましい転換の結果、過去一世紀で植物の遺伝的多様性の75%が既に失われたと国連はまた同様に報告しています。
グローバル農業の新たなパラダイムが早急に要求されます。食糧が家族、コミュニティー、全国的、国際的に全レベルで分かち合われるべき生活の必需品であることを私たちが受け入れるなら、次いで穀物と他の主要穀物を他の品物のように「商品」として扱い続けることは出来ません。それにもかかわらず、世界の食糧経済の全体系は人間の必要性のためではなく利益のために食糧が生産されるべきであるという信念に基づいています。それは、分かち合いがもしグローバル経済の改革プロセスを手引きするなら、食糧と農業システムにとって遠大な意味合いを持つのです。
例を挙げると、多くの面で分かち合いの対極である知的財産権によってそれは痛切に説明されます。それは、小規模農家が種を分かち合い確保する権利さえを剥奪する傍ら、企業が遺伝子のコモンズを民営化し「所有する」権利を持つという信念のもとに構築されています。最も貧しい世帯にとっての悲惨な結果と共に、金融市場の食糧価格への博打が近年極端な価格の揺らぎの原因となっていることを今暗示する明らかな証拠を持って、世界で何百万という人々が飢えている時、基本的食糧の株式市場への投機もまた不祥事なのです。
グローバル食糧システムを変革する
これらの動向を覆すことは、グローバル規模の行動と協力を必要とします。例にあげると、特に食糧価格危機の真っ只中で、最大企業が農産物の国際貿易から莫大な利益をあげることを可能にしている現在の地域・グローバル貿易をより公平なものとして確立することは不可欠です。農業貿易政策の指針の劇的な向け直しにおいて、OECD加盟国内とグローバル・サウス全体の両方で食糧の自給自足のより高いレベルを確立すること、市場を再調整して輸入への依存を減らすことをむしろ狙いとすべきです。
簡略すると、より公平で持続可能な食糧システムは、食糧を育て分かち合う権限を与えられた人々とコミュニティーにかかっています。より地域化され生態学的な人民先導の農業のやり方を支持し農業の企業的展望を拒否する食糧主権運動によって、この新たな指針が徹底して明瞭に表現されています。実に、小規模及び軽負担農業のための科学的討議は既に勝利しています: 2008年、4百人以上の専門家の結論が国連出資のIAASTD (International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development)において発表されました。それは工業型農業の現代システムについて痛烈な判断を下し、今日のグローバル食糧危機へ挑むための効果的な計画を政策立案者へ提出しました。
分かち合いの実践は食糧と農業の新たなパラダイムにおいて極めて重要な役割を持っていますが、明らかにそれはパワー構造と不公平なグローバル経済の下地となる政治へ取り組む経済の分かち合いの真の形態である必要があります。栄養価の高い食糧へのアクセスを万人へ保証する責任を各政府が最終的に受け入れることにより、分かち合いと協力の原理に沿って食糧経済を民主化し地域化する政策を制定することは不可欠です。要約すると、国際社会にとっての政治的挑戦がこれ以上決定的で根深いものはありません。それは、 食糧が商品以上のものとして扱われ、最終的に基本的人権として普遍的に分かち合われることを許す食糧の霊的で非物質的価値観を復権させることなのです。
上記は「グローバルな経済の分かち合い入門」からの抜粋です。
フォト・クレジット: DFAT photo library, フリッカー・クリエィティブ・コモンズ