ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の最新報告書によると、2017年、世界の国々は総額1兆7390億ドルを武器や軍隊に費やしました。実質的には2016年から1.1%という僅かな増加とはいえ、2017年の総計額は冷戦終結以来最高となりました。
これは前例のない額です。この2017年度支出は世界総生産の2.2%、また一人あたり230ドルに相当しました。「GDPからの取り分としての軍事支出」であり、「軍事活動に捧げられる国家資源の割合と経済の重荷を課する」「軍事の重荷」は1992年の冷戦後最高値3.3%から2014年の最低値2.1%の間を上下してきました。
2017年の5つの最大支出国はアメリカ、中国、サウジアラビア、ロシアおよびインドであり、その総計は世界軍事費の60%を占めます。アメリカ単独で2017年の世界総額の3分の1(6950億ドル)を占め、残りの7つの最大支出国を合計した以上の額を費やすことにより、世界最大の軍事国としての地位を維持できることを裏づけました。
アメリカの動向を見ると、オバマ政権とトランプ政権の間には明瞭な違いがあります。アメリカの軍事支出は2010年以降毎年下降していましたが、2016年から2017年は実質上変わりませんでした。しかしながら2018年の軍事予算は、トランプ政権によってかなり高い割合(7千億ドル)に定められました。
地域的動向
地域的動向を見ると、中東ではカタール、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)およびイエメンについての正確なデータの欠如から、SIPRIは2017年のこの地域の軍事費の総額を推定できませんでした。2009年から2015年までの間、この地域の軍事支出は41%増加しましたが、2015年と2016には石油価格の下落により16%減少しました。
2017年の支出が再び6.2%増加するなか、サウジアラビアはその地域で最大の支出国であり、アメリカと中国に次いで世界で3位でした。トルコが2008年から2017年の間、46%支出を増やすかたわら、中東で2番目の支出国である(244億ドル)UAEの2014年の軍事費の見積もりは入手不可能でした。 何年かの衰退の後、主に、イラン経済に恩恵をもたらしたヨーロッパ連合と国連の経済制裁の段階的解除により、2014年から2017年までの軍事費をイランは37%増やすことができました。イスラエルの軍事支出は2017年には1650億ドルへと4.9%の増加を見ました(アメリカからの軍事援助、約310億ドルを除いて)。今日イスラエルは、世界で最大の「軍事的重荷」(GDPの4.7%)を持つ10カ国のなかの一カ国です。
アジアおよびオセアニアの軍事支出は2017年には4770億ドルに達しており、2016年から3.6%、2018年からは59%の増加でした。これらの高い割合はこの地域をアメリカの次に最大の支出地域にしました。2008年から2017年までの間の軍事支出を最も増やした国はカンボジア(332%)、バングラデッシュ(1123%)、インドネシア(122%)および中国(110%)でした。2017年の中国の軍事費(2280億ドル)は、その地域の総計の48%を占めました。
欧州は2017年の世界軍事支出の20%を占め、3420億ドルでした。その軍事費は2016年に比べて2.2%低く、2008年に比べると僅かに高いだけでした(1.4%)。フランスの支出は5780億ドルへと1.9%下がりました;英国の軍事費が4720億ドルへとほんの0.5%上昇するかたわら、ドイツの支出は1999年以降最高レベルの4430億ドルへと3.5%上昇しました。
アフリカでは2017年には軍事支出は4260億ドルへと僅か0.5%下がり、世界軍事費の2.5%でした。2017年の北アフリカの軍事費は2110億ドルと推定されました:2006年以降初めての減少でした。アフリカ最大の支出国アルジェリアは、2016年から2017年までの間1010億ドルへと5.2%予算を削減しました。2017年のナイジェリアの支出は、テロリスト集団ボコ・ハラムに対する断続する軍事行動にもかかわらず4年連続で減少して160億ドルでした。
これらのデータは経済協力開発機構(OECD)からの予算に関する他の主要なインフォメーションと合わせて、OECD国が毎年軍事に費やすGDPの一部が「政府開発援助」(ODA)に費やされる額より遥かに高いことを示しています。後者は「発展途上国の経済開発および福利を促進することを目的とした政府の援助金」として定義されます。OECDによると、「軍事目的のためのローンおよびクレジットは[ODAから]除外されており」、この援助金は、ドナー国から被援助国へと相互間を通して提供されるか、または「国連や世界銀行などの多国間開発機関を通して向けられることが可能です」
OECD国の軍事支出とODAの間の溝は、多くの場合驚くほど深く、例えば、トルコは途上国への援助金よりむしろ軍事費を2倍以上費やしています:軍事にGDPの2.2%、そしてODAに0.95%。その溝はイスラエルの場合さらに深くなります:軍事費に4.7%、そしてODAに僅か0.10%。アメリカはGDPの3.1%を軍事に、そして0.182%を ODAに費やしています。その逆を行く国は僅かですが、例えば、ルクセンブルクは2017年には軍事予算(0.5%)よりむしろ ODA(GDPの1.00%)に2倍の額を費やしましました。
世界中の分析者、活動家および政策立案者がこの資源配分をしばしば批判してきました。国民の安全保障のために予算を良いように使う自由を各国が持つにもかかわらず、記すべき重要な側面があります。アントン・チェーホフはかつて言いました:「もし第一場面で壁にピストルをかけるなら、次の場面でそれは撃たれねばならない。そうでなければそこに置くべきでない」その時、「チェーホフの銃」と名づけられたこの原則は、「一度、銃が物語に登場するなら、それは撃たれねばならない」と言い換えられました。
1兆7000億ドル以上の世界軍事費は、明らかに、単純な「壁にかけられたピストル」以上のものを象徴します。その1兆7000億ドルの世界予算によって生産されたそれらの兵器がもたらす紛争の可能性は、これまでになく高まっています。
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