キーポイント:
- 関税下げは政府の歳入を大幅に削減します。それは特に、国家予算への資金の大部分を関税から調達している貧困国にとってそうです。
- もしドーハ・ラウンドの世界貿易会議が達成されたなら、貧困国は関税削減を通して634億ドルを失うことが可能です。
- 2カ国間および地域自由貿易(FTAs)は関税収入のさらに大きな損失をもたらすことが予期されます。例えば、欧州連合とのFTAはサブサハラ経済に年間26億ドルの損失をもたらし得ます。
- 貿易の自由化のより幅広い影響は、主に国内の農業および工業生産へのその破壊的影響のため、発展途上国のための国家収入のさらに大きい損失をもたらします。低所得国は1980年代および1990年代の貿易の自由化の結果、8960億ドルという驚異的な額を失いました。
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富裕国と世界機関は、世界貿易機関や自由貿易協定を通して経済を自由化することを貧困国に強制する代わりに、開発目的に従って国家経済を規制するために必要な政策空間を政府に許すべきです。
関税は、発展途上国にとって重要な歳入源です。これらの課税はまた、未成熟産業の成長を刺激すること、そしてより安価でしばしば多額の補助金を受けた輸入品から未発達な経済を守ることに役立ちます。関税とその他の「保護主義的」措置が先進国の経済発達のなかで重要な役割を果たしたにもかかわらず、同じ道を追う途上国の主権は貿易自由化の「自由市場」の持説を通して侵害されています。これは、関税および他の形態の経済的保護の撤廃を途上国にやむなくさせています。
この不当な経済パラダイムは、経済発達促進に役立つ貿易政策を途上国が選ぶ権利を尊重する国際通商への貧困支持のアプローチによって緊急におき換えられねばなりません。国境を越えて入ってくる輸入品への課税の維持を貧困国に許すことは何十億ドルもの追加的収入をもたらし得ます - 政府が貧困根絶および社会的保護プログラムへの資金を自国のリゾースから調達するために決定的な源です。
過去数十年間、政府や国際経済機関を超えた「新自由主義」またはプロマーケット・イデオロギーの過度な影響を考慮すると、貿易システム自由化を断続することへの途上国に対する圧力は様々な形態でやってきます [イントロダクションのボックスを参照]。例えば、グローバル・ノースおよびサウス間の貿易管理規則は、世界貿易機関(WTO)内で非民主的に交渉されます;自由貿易協定は、市民社会団体の広範な反対にもかかわらず、個々の政府と国々のグループの間で署名されます;そして債務返済、ローンおよび補助金交付の形で提供される経済的補助への条件として、貿易自由化が世界銀行および国際通貨基金によって途上国に押し付けられます。
この途方もない圧力のもと2、3の選択しか残されない資金不足の国々は、免税、そして貿易への他の障壁を削減することによって国境を国際競争に開放することを多くの場合強いられます[注釈参照]。[1] それによって、先進国の生産者が生産物を輸出し続けることをさらに簡単にしさらに利益を上げれるようにします。貧困国の工業発展を促進し、機械や技術など彼ら自身が生産しない生産品を輸入できるようにするため、自由化は必ずしも悪いことではありません。それはまた、途上国の輸出者に新市場へのアクセスを提供し、そして外国投資の拡大をもたらすことができます。
しかし急速かつ大規模な自由化は、特に関税削減が不可欠な歳入を大幅に削減するため、低所得および中所得国に極度に有害な影響をもたらし得ます。一部の自由貿易の提唱者が収入損失は比較的小さいと議論しているとはいえ、リサーチはこの見解とは相反し、途上国にとっての関税の損失は相当なものであり自由化からの利益を遥かに上回ることを示しています。[2] 1980年代以来貧困国に押し付けられたその他の自由市場改革と合わせて、貿易障壁の突然の引き下げはまた、地元産業を破壊し得るどの経済政策にも適用できるアプローチの一部となり、大規模な雇用損失をもたらしそして特定の開発ニーズへの適切な政策を決定する政府の能力を制限し得ます。[3]
歳入拡大
関税が富裕国の歳入の1%未満を占める一方で、多くの途上国は国家予算への資金調達を助けるためにそれに大きく依存しています。これはなぜなら、関税徴収が最も簡単だからということと、そしてそれは他の租税形態ほど施すのに経費がかからないからです。それは大きなインフォーマル部門およびより小さい管理能力をもつ国々にとって特に重要です。バングラデシュ、ナミビアおよびセネガルなど一部の貧困国は、全国家予算の約3分の1の資金を関税を通して調達します。[4] ボツワナの場合、関税への依存は世界で最高レベルにある国々のうちの1カ国ですが、アフリカの最も迅速に拡大する経済をもつ国々の1カ国でもあります。[5]
世界中で自由貿易政策が交渉され続けると同時に、関税からの収入はおよそすべての国で大幅に低下しました。1995年、全体的な歳入の一部として関税収入は低所得および中所得国において17%を平均としました。[6] 2009年、これらの国々の歳入は平均7%まで大幅に低下しました。[7] 1996年から2007年までの間、アフリカ諸国だけでGDPへの関税の貢献は3分の1減少しました [参考図1]。[8] さらに貧しい国々にとって、国際貿易への課税からの収入の損失は極端です;例えば、ザンビアでは1995年に関税収入は歳入の36%を占めましたが、2009年には8%でした。チュニジアでは、その割合は1995年の歳入の28%から2009年の6%へと低下しました [テーブル9]。[9]
輸入障壁およびサウスでの関税の撤廃を正当化するために国際通貨基金(IMF)は、関税収入の損失は、付加価値税(VAT)など購入に対する他の国内税の導入または増大を通して埋め合わされるだろうと理屈付けしました。しかしながら、低所得国が1980年代初頭以来削減された関税から損失したうち単に約30%を取り戻すことができたのみだということを、IMFの総合研究は現在証明しています。[10] 関税と比較するとVATは大きなインフォーマル部門をもつ国々での歳入拡大に特に無益で、その徴収は多くのより貧しい国々が賄うことが不可能な洗練された施行プロセスを必要とします。必需品のための適切な税額控除なくしてVATもまた、偏って低所得者に打撃を与える後退的課税形態となり得ます。[11]
これまでにたくさん執筆された途上国への有害な自由化の影響にもかかわらず[ボックス参照]、多国間および2カ国間自由貿易協定は、関税からの収入への厳しい制約を強制し続けます。世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドの断続する多国間交渉は、非農産品への失われた関税収入を通してだけでも最終的に634億ドルの損失を途上国へもたらし得ます - それは、国際貿易の量の拡大をもって近年大幅に拡大したかもしれない金額です。[12] この金額は、もしドーハ・ラウンドの交渉が成功したなら、貿易の増大からこれらの国々が得るだろうと世界銀行が予測した利益より4倍高いのです。[13]
議論の絶えない自由貿易協定はまた、自国の生産品のための新市場を求める政府の間で交渉され続けます。例えば、 欧州連合(EU)とアフリカ、カリビアンおよび太平洋(ACP)経済の間の経済連携協定(EPA)は、殆どのEUの生産品の輸入への関税の撤廃の結果として、 ACP諸国の財政収入に相当な悪影響を与えることが予期されます。サウスセンターによる、アフリカ諸国へのEPAの影響に関する最近の分析の見積もりによると、欧州市場へのより簡単なアクセスの経済的利益は関税削減からの歳入の大きな損失を遥かに下回りました。簡単な費用便益分析を使ったその研究の控え目な見積もりによると、アフリカの後発開発途上国にとっての損失は12億7500万ドルを超え、全サブサハラアフリカの国々にとっての損失は26億300万ドルでした[注釈参照]。[14]
貿易自由化のより幅広い影響
関税からの収入損失の他に、貿易の自由化は途上国の収入のもっと大きな損失さえもたらし得ます。関税および他の貿易障壁を撤廃することは、国内に洪水のように流れ込んでくる安価な輸入品と競争できないまま多くの農業者および地域産業を残し、しばしば工場閉鎖、上昇する失業および低収入をもたらします。これらのよくない影響は農産物輸入の場合、富裕国政府が自国の農業者に支払う多額の補助金によって激化され、それは人為的に安価な食料の過剰生産および輸出を途上国にもたらします。さらなる打撃として、ノースの富裕国はいまだ自国の免税を維持し、そして農業やテキスタイルなどのキーセクター内で貿易への他の非関税障壁を持続しており、途上国の生産者が輸出し商品を外国に売ることを難しくしています[この報告書の農業補助金についてのセクション6を参照]。
長期的に、貿易自由化によって国内産業にもたらされた被害は、一部の最も貧しい国々にGDPの実質的な損失をもたらし得ます。クリスチャンエイドの調査によると、貿易自由化はアジア、ラテンアメリカおよびサブサハラアフリカの32の低所得国にとって総計8960億ドルの被害をもたらしました。[15] サブサハラアフリカ全体で、貿易自由化の結果1980年代および1990年代の間2720億ドルを失いました - 彼らの債務を一掃し、すべての子どもが予防接種を受け学校に行くのに十分な金額でした[16] 。債務返済、資本逃避および違法の資本の流れと組み合わされる時、そのような収入の損失の影響は貧困国経済を無力にします。
もし国際社会が、サウスの国々が自国経済を発展させ貧困から脱けだすのを助けることに真剣なら、少なくとも、彼らが同等に貿易するのに十分な堅牢さをもつようになるまで、未成熟産業および国内生産者を国際競争から守ることを助けるために努力がなされねばなりません。ハジュン・チャンおよび他の経済学者によって十分に議論されているように、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、スエーデン、ベルギー、オランダ、スイス、日本、韓国および台湾を含んだ現在の先進国の工業発展のための政策は、自由貿易の自由本人主義のイデオロギー基づいたものでなく、開発の初期段階における主要産業のための保護主義的戦略が使われました。先進国と同じような方向に沿って経済を発展させることを試みた低所得国にとって貿易自由化は、初期の開発の道において富裕国が用いた保護主義的な関税や補助金の「梯子を蹴飛ばす」ことと同等であり得ます。[17]
I富裕国が長期間恵まれてきた同じ利益を途上国が楽しむために、それが自由貿易協定の条件としてであろうと、経済的援助の見返りとしてであろうと、関税を維持し先進国または多国間機関から経済を自由化するよう圧力をかけられない政策空間を彼らは与えられねばなりません。WTO交渉における「特別かつ異なる待遇」の原則に従って[下記参照]、主権国は経済開発のための国内戦略に沿って関税を上げる権利を保つべきです。
どれだけの歳入が動員され得るか
途上国政府が、もし自国の関税レベルを維持し開発目的に従い国家の経済を規制することを許されたなら得ることのできる相当の利益を、次の例が明らかにしています。
もし途上国がドーハ・ラウンドの貿易会議内での彼らの関税を削減する義務を持たなかったなら、歳入から634億ドル以上を現在調達できるでしょう。[18]
機能しているか交渉中の2カ国間および地域自由貿易の多くのなかで、経済連携協定(EPA)の改革だけでも毎年推定26億ドルをサブサハラアフリカ諸国に保証できます。[19]
貿易正義のための戦い
企業贔屓の経済的ゴロバリゼーション・モデルの破壊的な社会的、政治的および環境的結果にもかかわらず、ノースの政府はWTOを通して、そして北米自由貿易協定(NAFTA)、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)または「貿易、成長および世界情勢」として知られる欧州連合の最近の新しい貿易戦略をなどの2カ国間協定を通して、自由貿易を押し続けています。このさらなる規制緩和の結果、関税収入はこの先何年か下がり続ける方向にあります。
2001年にドーハ開発ラウンド(またはドーハ・ラウンド)が開始されて以来、世界貿易への貧困国の公平な参加を強化すると推定されたWTO交渉は失敗を繰り返しいまだ確定していません。交渉の行き詰まりの中心には、豊かな先進国を支持して不公平に不均等である一方、極端な要求を途上国に押し付けていると感じられる関税削減を巡るディベートがあります。工業製品のための交渉について特にそう言えます。[20] 殆どの途上国が非常に高い工業製品関税をもつため彼らの関税は先進国のそれに比べ大幅に削減されることとなり、先進国の約25%削減に比べ一部の主要な途上国では最高70%という極端に著しい削減となります。[21] アメリカが彼らのサービス部門をまだもっと外国の所有権と競争に解放しようとするかたわら、途上国はまた、もしドーハ・ラウンド会議が締結されたら、農産物の関税をさらに36%削減するよう義務付けられるでしょう。[22]
歴史的および構造的考慮事項に取り組み、開発懸念への不公平なWTO規則を再調整することを意図した様々な譲歩が、「特別かつ異なる待遇」の原則のもと途上国のために交渉されています。しかしながら途上国市場への関税およびクオータのないアクセスなどこれらの措置は、貿易制度の構造上の不平等に取り組むためには不十分だと運動団体によって広く考えられています。これらの譲歩のいくつかを取り囲む協定の欠如が、なぜ2008年7月のドーハ会議が失敗し今日主要な障害であり続けるのかという主な理由でした。2011年末までに、WTOの最高決定機関である閣僚会議で加盟国は行き詰まりに達したことを公に認めました。[23] その11年目において、現在ドーハ・ラウンドの加盟国の間には熱心な支持者は殆ど残っておらず、新たな議題に取り組むためにドーハの完全解散を一部の加盟国は提唱しています。[24]
国際貿易の交渉の結果に関係なく、2カ国間および地域貿易取引は一般的に、WTO交渉よりさらに大きな関税削減を要求します。例えば後発開発途上国(LDC)は、農業、サービスおよび工業製品におけるWTO交渉の関税削減の多くから除外されています。しかしEUとアフリカ、カリビアンおよび太平洋(ACP)諸国の間の経済連携協定(EPA)において、すべての関税の80%を0にすることをEUはACP諸国に要求しています。[25] 多国間交渉成功への限られた希望のなかで、アメリカおよび他の国々はまた、現在特定の国々との「多国間」貿易を考慮しています。これは、最も資源をもつ国々が自国の優先事項を追求するかたわら、途上国の問題が見捨てられるさらなるリスクをもたらします。
経済的グロバリゼーションの再考
世界の繁栄が自由貿易および経済的グローバリゼーションの戒律に依存していることを、決して誰もが確信しているわけではありません。不当な貿易規則および協定は、過去数十年間で先住民グループおよびキャンペーナーの間での広範囲な抗議の火付け役となりました。最も記憶に残るのは、約10万人の抗議者が1999年のWTO閣僚会議に対してデモをおこなった「シアトルの戦い」です。今日、強国による不当な条件といじめ作戦は、国際貿易交渉の最終的成功への大きな障害として途上国に広く認識されたまま残ります。貿易規則が交渉される方法の根本的変革を多くの市民社会組織は要求し、グローバル・サウス諸国の発展の展望を弱体化するだろう政策に封じ込めるよりむしろ、ドーハ・ラウンドを完全に廃止するよう長い間押し続けてきました。[26]
徹底的な関税削減を通して市場を開放することを貧困国に強制してきた過去数十年間の新自由主義イデオロギーを世界リーダーは再考し始めています。2005年のグレンイーグルズ・サミットにおいて、弱い経済の輸入の自由化を将来強制しないことを彼らは約束しました。トニー、ブレアによって設定されたアフリカ・コミッションはまた、アフリカが十分強くなるまで輸入を自由化するよう彼らに圧力をかけるべきでないと結論づけました。この所感は、構造調整政策を通して農業セクターを自由化することを貧困国に強制することによって世界のリーダーたちが「吹き飛ばしてしまった」と2008年に述べた、元大統領ビル・クリントンによっても感じられたものです。グローバル経済危機に続いて、ゴードン・ブラウンとニコラス・サルコジの両者が、WTOにおいて合意された関税よりさらに低く関税を設定するよう途上国に圧力をかける一連の政策に言及し、自由市場のワシントン・コンセンサスは今死んでしまったと述べました。
既存の加盟国に影響はないながらも、WTOに加盟する後発開発途上国にもう少し関税の政策柔軟性を許すために最近WTO規則が緩められました。[27] しかしながら自由貿易および国際競争の柱を基盤としたグローバル経済システムへの根本的変革を政府が起こそうとしている兆候は殆どありません。殆どの国において、国内雇用創出を優先したりまたは国民の不可欠なニーズに応じる成長や多様化の代わりとなる方法を考慮するよりむしろ、海外市場へのアクセスの拡大から経済成長への基本的な刺激はもたらされると考えられています。[28]「保護主義」は権力の回廊において汚い言葉として残り、そしてもし彼らの貿易が輸入によって弱体化させられるという心配を彼らが表そうものなら、労働者やビジネスは「プログレスの道を遮る」ものだといまだに言われます。
これは、関税を下げることと世界貿易を拡大することは、雇用創出および経済成長への持続的な解決策を提供せず、世界を飲み込んでいる食料、経済および気候危機をむしろ激化するでしょう[ボックス参照]。もし富裕国およびグローバル機関がWTOまたは地域および2カ国間貿易交渉を通して彼らの経済を自由化し続けることを途上国に強制することをやめるべきなら、パラダイムの劇的変革が明らかに必要とされます。規制されない世界市場に基づいた経済的グローバリゼーションの優勢的なアジェンダの周りをまわる共通目標のなか、市民社会および大衆の社会運動が結束する以前にそれはこれまでになく重要です。
ボックス19:自由貿易ドグマを拒否する
世界中の殆どの主流の経済学者、政策立案者および会社重役によって、自由貿易への信念はおよそ宗教的熱狂のなか追求されます。外国企業のためのアクセスを促進するために、農業から銀行まで経済の全セクターが漸進的に規制緩和および自由化されると同時に、国際自由貿易協定および政策を通してますます途上国は不公平な競争サイクルに封じ込まれています。比較優位の理論による正当化を通して、社会的または環境的結果に関係なく、各国が専門とする最高のものを生産し、そして他のすべてのものを外国から購入するよう各国は言われます。それは、コミュニティおよび国家は自立を捨て輸出品を僅かしか生産せず、そして彼らの主権をさらなる雇用、さらなる物資およびより高い生活水準への約束と引き換えに諦めるべきだという意味です。[29]
貿易自由化は、途上国において選択の余地なくして常に達成されてきたのではありません。1980年代以来、いわゆる「構造調整」政策の一部として貿易自由化を実施した国際通貨基金(IMF)および世界銀行によって、重い債務を背負った国々へのローンに条件が付随されました。1995年に確立された世界貿易機関(WTO)はまた、途上国が市場を開放し多国籍企業および海外投資家のために新たな機会を創出するよう強制しました。その目的は、自由貿易を通して雇用拡大、貧困削減、不平等縮小、そして世界中での持続可能な開発促進であったとWTO協定書の序文が述べたにもかかわらず、それはこれらの目標を達成することに大部分失敗し、代わりに、反対の結果を多くの国々にもたらしました。
全体的な関税削減および輸出主導型生産への転換に続き、穀物、木材およびミネラルなどの基本的物資を生産する労働者は、WTO開始以来大量の低コストの輸入品が価格を急落させて以来これまでにないほど貧困化しています。土地を失った農民が、都市に移り住み都市部の人口密度上昇の一原因となるか、あるいは急速に過度に負担がかけられる痩せた非生産的土地に移るかの一方で、基本的ニーズの主要作物を育てるための土地が大生産者によって奪われ、食料不安および栄養失調が増大しています。輸出の熱狂はまた、発展諸国が木材輸出のための森林伐採、パーム油生産、汚染する農薬および化学肥料に依存する商品作物の輸出、あるいはサンゴ礁や海洋生命を破壊する大漁船など、天然資源の搾取を通して生態学的持続可能性を弱体化しています。[30]
勝利者と敗北者
世界貿易の巨大な成長にかかわらず、そして拡大する経済が貧困者に利益をもたらすという約束にもかかわらず、貧困との戦いはいまだ敗北したままです。世界貿易は1990年から2010年までの間およそ5倍となり所得は2倍となりましたが、教育、健康および栄養は、世界中の経済が過去10年以上のブームとなった2000年以後より遅いものでした。[31] 約束されたように、富裕国と貧困国の間に所得収束をもたらす代わりに、自由貿易は先進国と途上国の間だけでなく世界中の富裕国および貧困国内での所得不平等を激化させてきました。[32] 貿易自由化の成長利益もさらに拡張して述べられてきました;途上国の経済成長は、経済的グローバリゼーション政策が猛烈に押され始める以前の1960年代および1970年代のそれを下回っています。[33]
自由貿易の第一の受益者は、世界貿易の70%を支配する約500の大きな多国籍企業(MNC)の重役および株主です。トップ200企業の合計売上高は、1983年から1999年までの間の全体的経済活動より急速に成長し、世界のGDPのおよそ30%に相当しました。それにもかかわらず、これらの企業は世界の労働力の1%の4分の1を雇用するに過ぎません。[34] 自由貿易の第二の受益者は、国内企業の貿易活動を通して経済成長を経験している高所得国政府です - 多数派の小規模・中規模農家および生産者とは対照的に、それはまたも圧倒的に大きなMNCやアグリビジネス企業なのです。
WTO、世界銀行およびIMFの戦略を特徴づける経済・社会政策への完全に市場主導型または「新自由主義的」アプローチは明らかに機能しておらず、これらの機関は根本的改革を長期間必要としてきました。富裕国と貧困国の能力および富の莫大な格差を持つグローバル化された経済において、より効果的かつ包括的グローバル・ガバナンス構造が確立されることは不可欠です。キャンペーナーによってしばしば述べられるようにこれは、貿易自体が目標としてでなく、より幅広い社会的、環境的および経済的開発目標を達成するための手段として考えられるように適切な位置にそれを固定することによって始まるのです。WTO、ならびに地域的および2カ国間貿易体制を通して実施されるそれに関連した無数の政策だけでなく、新自由主義的世界貿易モデルの根本的再考をも必要とするのです。
さらに知り参加しよう
Alliance for Responsible Trade: A coalition of US organisations campaigning for a different trade policy that serves first and foremost to promote equitable and sustainable development for all people. <www.art-us.org>
Alternatives to Economic Globalization: Edited by John Cavanagh and Jerry Mander, this book is a bold answer to critics who assert that the anti-corporate globalization movement does not have alternative proposals. Published by Berrett-Koehler, 2004.
Bilaterals.org: a collective effort to share information and stimulate cooperation against bilateral trade and investment agreements that are opening countries to the deepest forms of penetration by transnational corporations. < www.bilaterals.org>
Center of Concern: A faith-based organization providing information and analysis on economic justice issues. See the Rethinking Bretton Woods (RBW) section. <www.coc.org/rbw>
Focus on the Global South: An Asian NGO combining policy research, advocacy, activism and grassroots capacity building in order to generate critical analysis and encourage debates on national and international policies related to corporate-led globalisation, neo-liberalism and militarisation. <www.focusweb.org>
Kicking Away The Ladder: A now-classic book by Ha-Joon Chang that explains how industrialised nations are preventing developing countries from adopting the same protectionist trade policies that they themselves used to become rich. Published by Anthem Press, 2003.
The Luckiest Nut in the World: A short film by Emily James that follows an animated American peanut who sings about the difficulties of trade liberalisation in developing countries. <www.mediathatmattersfest.org/films/the_luckiest_nut_in_the_world>
Our World Is Not for Sale: A network of organizations, activists and social movements worldwide fighting the current model of corporate globalization embodied in the global trading system. <www.ourworldisnotforsale.org>
Signing Away the Future: An Oxfam paper from March 2007 that explains how the new free trade agreements being signed up between rich and poor countries are proving far more damaging to the poor than anything envisaged within WTO talks. <www.oxfam.org/en/policy>
Trade Justice Movement: A coalition of organisations based mainly in the UK that together call for trade justice - not free trade - with the rules weighted to benefit poor people and the environment. <www.tradejusticemovement.org.uk>
Whose Trade Organisation - A Comprehensive Guide to the WTO: An expose by Lori Wallach and Patrick Woodall that reveals which WTO terms have led to U.S. job losses, the race to the bottom in wages, unsafe food, attacks on environmental and health laws, and burgeoning international inequality. Published by The New Press, New York, 2004, Distributed by Norton.
Notes:
[1] Note: Import tariffs are the primary but not the only way in which countries either liberalise trade or protect their economies. Non-tariff barriers to trade can include import and export licenses, quotas, subsidies, embargoes and other forms of regulation that serve to raise the price of traded products. A strict definition of free trade would mean the complete elimination of tariffs and other barriers to trade.
[2] Timothy A. Wise and Kevin P. Gallagher, Doha Round and Developing Countries: Will the Doha deal do more harm than good?, RIS Policy Briefs No. 22, April 2006; Aldo Caliari, ‘The fiscal impact of trade liberalisation', in Matti Kohonen and Francine Mestrum (eds), Tax Justice: Putting Global Inequality on the Agenda, Pluto Press, 2009, p. 134.
[3] For example, see: John McGhie et al, The damage done: Aid, death and dogma, Christian Aid, May 2005; Justin Macmullan and Andrew Pendleton, Taking liberties Poor people, free trade and trade justice, Christian Aid, 2004.
[4] Data from World Bank, World Development Indicators 2006, Washington D.C., 2006, Table 4.12. See Jens Martens, The Precarious State of Public Finance Tax evasion, capital flight and the misuse of public money in developing countries - and what can be done about it, Global Policy Forum, 2007, table 8, p. 22.
[5] OECD and African Development Bank, African Economic Outlook 2010, Special theme: Public Resource Mobilisation and Aid, 2010, p. 93.
[6] Figures drawn from World Bank, World Development Indicators, Washington D. C., 2005, table 4.13. See Jens Martens, The Precarious State of Public Finance, op cit, p. 21.
[7] World Bank Group, World Development Indicators 2011, Washington: 2011, see table 4.14 on p. 248.
[8] African Economic Outlook 2010, op cit, p. 93.
[9] World Development Indicators 2011, op cit, see table 4.14 on pp. 246-248.
[10] T. Baunsgaard and M. Keen, Tax Revenue and (or?) Trade Liberalisation, IMF Working Paper WP/05/112, June 2005.
[11] Christian Aid et al, Tax Justice Advocacy Toolkit: A Toolkit for Civil Society, January 2011, p. 4.
[12] Note that this figure relates to NAMA (Non-Agricultural Market Access), the industrial goods agreement being negotiated in the WTO Doha Round. See: Kevin P. Gallagher, Putting Development back in the Doha Round, Yale Journal, Spring/Summer 2007, p. 117.
[13] Kym Anderson and Will Martin, Agricultural trade reform and the Doha development agenda, World Bank, 2005, table 12. Quoted in Christian Aid and SOMO, Tax Justice Advocacy, op cit.
[14] Note: The study estimated financial gains for sub-Saharan countries to $782.2m and revenue losses as $3385.2m. Net gains are therefore calculated as $2603m. See: South Centre, Economic Partnership Agreements in Africa: A Benefit-Cost Analysis, Analytical Note SC/TDP/AN/EPA/29, November 2011, p.12.
[15] Christian Aid, The economics of failure: The real cost of ‘free' trade for poor countries, June 2005, p. 2.
[16] Ibid, p. 1.
[17] Ha-Joon Chang, Kicking Away the Ladder: Infant Industry Promotion in Historical Perspective, Oxford Development Studies 31:1, 2003.
[18] See reference 13.
[19] See reference 14.
[20] World Trade Organization, Market Access: Negotiations, A simple guide - NAMA Negotiations, Accessed 28th November 2011, <www.wto.org>
[21] Martin Khor, ‘Crunch time arrives for WTO talks', Global Trends Series by Executive Director, 25th Apr 2011.
[22] Martin Khor, ‘Little progress in WTO's Doha talks', Global Trends Series by Executive Director, South Centre, 28th Feb 2011.
[23] International Centre for Trade and Sustainable Development, ‘2012 Should Not be a "Wasted Year," Lamy Urges WTO Members', Bridges Weekly Trade News Digest, Vol 16, No. 6., 15th February 2012.
[24] Chakravarthi Raghavan, ‘From bicycle to snowball approach to policy', SUNS #7300, Third World Network, 2nd February 2012.
[25] Martin Khor, ‘Need for Africa to Re-think the EPAs in Light of the Economic Crisis', Presentation at the African Union conference of Trade Ministers, Addis Ababa, 20th March 2009.
[26] For example, see: World Development Movement, Missing presumed dead: Whatever happened to the Development Round?, June 2006.
[27] Paige McClanahan, ‘New WTO rules ease entry for least developed countries', The Guardian, 6th July 2012.
[28] Jayati Ghosh, ‘The Export Obsession', Macro Scan, Economic Research Foundation, 17th November 2005, <www.macroscan.org>
[29] David Morris, ‘Free Trade: The Great Destroyer', in Jerry Mander and Edward Goldsmith (eds), The Case Against the Global Economy, 1996, chapter 19.
[30] Robin Broad and John Cavanagh, Development Redefined: How the Market Met its Match, Paradigm Publishers, 2009.
[31] Social Watch, Basic Capabilities Index 2011. Economic growth does not ensure human well-being, Press Release, October 2011, <www.socialwatch.org>
[32] Lori Wallach and Patrick Woodall, Whose Trade Organisation: A Comprehensive Guide to the WTO, The New Press, 2004, p. 174.
[33] Mark Weisbrot, Robert Naiman and Joyce Kim, The Emperor Has No Growth: Declining Economic Growth Rates in the Era of Globalization, Centre for Economic and Policy Research, November 2000.
[34] John Cavanagh and Jerry Mander (eds), Alternatives to Economic Globalization, Berrett-Koehler Publishers, 2004, p. 44.
Image credit: Friends of the Earth Europe