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パリ協定に対するSTWRの評価

STWR
2015年12月23日

分かち合いの原理、公平さ及び正義を弱体化するグローバルな気候変動交渉に真の熱望も正義もありません。しかしパリでの「責任回避」交渉後、拡大する人々の声の力がより平等で持続可能な世界の到来を告げることが出来るすべての希望がまだあるのです。


世界のリーダー、外交官、ロビイスト及びNGOの全員が去ったCOP21終了後の現在、環境キャンペーナーはパリで同意された新たな気候変動交渉の実績に関する評価をいまだ見積もっています。色々な点で、「人類にとっての大飛躍」や「世界最大の外交的成功」など大々的に賞賛する新聞の見出しが正当化されました。産業革命前に比べて1.5度高い気温レベルを維持する意欲的な目標は確かに期待以上に野心的であり、今世紀後半には「人間による温室効果ガス排出ネットゼロ」の最終的目標について色々言われました。

しかしながら大げさな宣伝にも関わらず、環境的持続性やグローバル正義の視点からパリ協定を実際の成功と呼ぶことは不可能です。2C以上の世界的気温上昇を防ぐためには、世界の大国が約束した個人のガス排出削減が不十分であろう一方、1.5Cの願望は、それに取り掛かるための実際的方策なくして無意味だと緑の活動団体は広く主張しています。惨事的3C上昇に私たちはいまだ向かっており、そしてこれら既存の誓約は法的拘束力さえありません。今のところ、本当の意味で意欲的であることからは程遠く、富裕国に義務付けられた拘束的目標や意味のある二酸化炭素削減はもはやありません − それは、京都議定書(それ自体が1997年の時点で不十分と見なされた)からおおよそ一歩後退しています。
 

発展途上国が気候変動に適応し、化石燃料から離れることを助力する新たなお金が全く誓約されていないことにおいてもまたこの協定は公正ではありません。市民社会の分析によると、既存の誓約である年間千億ドルの気候変動資金は必要額の4分の1であり、そしてこれもまた法的に拘束力がなく不明瞭な言葉で言い表されています。キャンペーナーが長い間理由付けて来たように、それは援助、ローンまたはチャリティの問題でなく;世界の大部分への富裕国の歴史的負債に関するものです。それにもかかわらず、貧困国に義務が転換され、気候修復の提案が限界から押しやられたところのパリ交渉の基盤からは程遠いのでした。同時に、最終合意の本文では人権や先住民の権利についてのどのような言及も省かれていました。

「公平な分担」への拡大する要求

もっと明るい話題に変えると、分かち合いへのグローバル・コールは現在、環境正義問題に集中する市民社会活動家の間での中心的テーマです。誠に、パリ会議の山場は従来通り、先進国と発展途上国の間で気候変動の責任をどう分担するかについての困った問題に関係します。炭素排出削減への政府の誓約についての主な市民社会報告「公平な分担」に表されるように、どんな気候変動交渉の成功であろうと公正さと公平さがどのように鍵となるかをキャンペーナーは細心の注意を払って明確に述べています。COP21での#公平な分担を富裕国が憶えておくようにという要求は、会議外で行動を披露した抗議者のスローガンでさえありました。

予想されたように、地球の大気圏を富裕国と貧困国の間でどう公平に分けるかについてのどんな話し合いにも必要不可欠な目標の基盤である、世界的炭素収支への明瞭な言及が最終同意にはありませんでした。会議は公正性や公平性の展望をまったく明確にしませんでした;それとは反対に、公平だが差異ある責任と能力として知られるUNFCCC交渉の公平性の原則を弱体化するために、アメリカはいじめ戦術や賄賂を使って可能な限りすべての手段を尽くしました。

気候変動の根本原因に取り組み、不平等や過剰消費を削減するために必要な方策に全力投球する代わりに、殆どの世界リーダーは化石燃料搾取によって煽られる不正な経済システムを認可し続けます。一方でTTIPやTPPなどの環境的に破壊的な貿易契約を押し続ける傍ら、もう一方ではパリ協定に主要な先進国が署名するということには明らかに矛盾があります。広く指摘されているように、テキスト中では「化石燃料」という言葉には触れられておらず(80%の化石燃料を地中に留めて置く必要については問題外です)、そしてグローバルGHGにおいて化石燃料産業の次に来るグローバル軍事産業ネットワークへの言及は全くありませんでした。
 

汚染者の大逃亡

 

ひとりの革新的アナリストによると、最近の気候変動に関する合意は富裕国に対する規則を弱め、グローバル経済の構造化における根本的変革への望みがないため、「汚染者の大逃亡」として歴史上思い出されることでしょう。近い時期に、そしてより長期的に気候変動に取り組むために必要な難しい政治的、経済的及び社会的変革を話し合うことからは程遠い、カーボンマーケットや大企業に都合の良い他の偽の解決策へもまた今一度再びドアが開かれます。

これらすべての理由とその他の多くの理由のため、より公正で持続可能な経済システムを構築するための真の希望は積極的に活動する一般市民の肩により一層堅くのしかかっています。COP21に続いて多くの環境活動家の最後の言葉が繰り返され得るだけです:変革への主な障害は科学的なものでも技術的なものでもなく、社会的及び政治的なものです。コンベンションセンターや政府機関の中ではなく、大規模な平和的デモと直接的行動を通して街頭でその歴史はつくられるでしょう。善意の人々として、私たちはグローバル企業の力を取り壊すにはまだ十分に強くありませんが、全体に渡る斬新な変革が急速に拡大しているという証拠はますます増えています。
 

従ってたとえパリ協定が真の世界的表現形態に近い何かに分かち合いの原理、正義及び公平性を反映出来なかったとしても、環境制約内で地球資源を公平に分配するという21世紀の大きなチャレンジがこれ以上明瞭であったことまたは緊急を要したことはかつてありません。

STWRのモハメッド・メスバヒは次のようにコメントしています:「地中に化石燃料を保ち、再生可能エネルギー源へ移行し、コモンズを保護し、よりシンプルに生活するなどの必要性について情熱と聡明さを持って運動する多くの献身的活動家がいます。しかし彼らは全人口の支持を必要とする役目を果たそうとしている比較的小数の人々であり、それは、私たちが気候変動の大惨事へ突入しているという科学者からの警告にあなたが耳を傾けるなら意味をなさないのです。それらの科学者たちは、政府だけに話しているのではありません:彼らは世界の人々、私たち、あなたと私に話しているのです。
 

今日、環境問題に関する限り、すべての家族が自分たち自身の政府であるべきです。あたかも私たち全員が人類のための大使であるかのように、この惑星を救う任務において私たちは各自の役を演じる大統領や首相となるべきです。

とりわけ、私たちは更なる抗議デモ活動を、それが拡がり更にますます大きくなるまで続けねばなりません。数々のグローバル・サミットでどのように世界のリーダーたちが多くの約束をし、その後グローバル企業の利益を上げるビジネスのためにまた別のマスクをかぶるかを私たちは観察して来ました。従ってそれらの政治家が彼らの商業化計画が環境保護及び修復とは相いれないということを理解するまで私たちは粘り通さねばなりません。
 

私たちは、化石燃料や兵器から気候資金や再生可能エネルギーへとお金を転じるための既存の要求を拡大せねばなりません。必要とされる技術、発明の才及びお金のすべてがあるのを私たちは知っています。しかし絶え間ない平和的動員を通して表現される公衆からの膨大な圧力なしで政府が自分たちの優先事項を変えることはないでしょう」。


フォト・クレジット:Columnf.com