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グローバルな分かち合いの経済に融資する、パート3(6):アグリビジネス支援の廃止

2012年10月1日

キーポイント:

  • 先進国は農業セクターを支援するために毎年3740億ドルを支出しています。そしてその大部分は豊かな大規模農業者およびアグリビジネスが対象です。
  • 先進国におけるアグリビジネス支援は、毎年消え続ける家族経営の小規模農家にとって経済的に破壊的影響を持ち得ます。
  • 発展途上国の何百万人という小規模農家は、富裕国からの補助金を受けた安価な輸入農産物品と競争できず、農業の営みを諦めるかあるいは貧困の深みに嵌っていくかのどちらかです。
  • OECDの補助金が持続する生産および消費の産業モデルは環境破壊と過度の公害の原因であり世界炭素排出の割合の大部分を占めています。
  • 不適切で無駄の多い農業補助金の廃止は、OECD諸国全体で50%範囲の大幅削減を必要とすることが予測されます。これは、グローバル・サウスにおける飢餓および剥奪を防止する上で必要な年間1870億ドルを募ることが可能です。
  • OECD諸国の残りの補助金は、食料主権の原理に基づきより地方化されたアグロコロジー的農業の営みへの移行を支持するために再調整されるべきです。

世界食料システムは深刻な危機に遭遇しています:世界人口を養うために十二分な食糧が生産されているにもかかわらず、生命を脅かす食糧緊急事態が多くの発展途上国を破壊し続け、およそ10億人が現在飢えています - 世界人口の7人に一人です。[1] そしてまた、気候変動、環境劣化および人口増加から生じる大きな課題に政府が直面する一方で、肉およびバイオ燃料生産への増大する需要が今後数十年にわたる農業地への圧力をさらに激化する軌道にあります。

これら相互連結した問題の構造的原因は複雑であり、それには不公平な国際貿易規則、金融取引の影響、そして多国籍アグリ企業の拡大するパワーと集中が含まれます。しかし食料システム危機の基盤となるのは、富裕国の少数派の農場運営に支払われる莫大な補助金によって大部分が維持される工業型農業の「現代」版です。

地方化された生産および消費と合わせて環境的に持続可能な営みをする小規模農業者へのより大きな支援を専門家が要求しているにもかかわらず、これらの補助金は大きな工業型生産者を有利にし続けます。現在断固として証明されているように、僅か少量の化学物質投入を使用してより多様な作物を栽培する小規模農場を必然的に伴った「アグロエコロジー」的食料生産は、飢餓および貧困を削減する発展・持続可能性を達成するために最も効果的方法であり、栄養、健康および農村生活を改善し社会的・環境的持続可能性を促進します[下記のボックス14参照]。[2]

農業補助金改革だけでは農業危機の根本原因への取り組みには不十分ですが、最も非常識な補助金を大幅に削減することは、世界中の何百万人もの小規模農家の保護だけでなく環境保護をも促進することができるでしょう。同時にこれらの削減はアグロエコロジー的農業の営みおよび発展途上国の食料安全保障拡大のために年間何十億ドルもを政府が募ることを可能にするでしょう。

少数派のための補助金

経済協力開発機構(OECD)34カ国の農業者を支援するために政府が国庫収入から支出する額は近年徐々に減少しているにしてもまだかなりの額です。2010年これらの国々は農業セクターを支援するために1日10億ドル(年間3740億ドル)以上を支出しました。このうち農家に直接提供された援助金(生産者支援と呼ばれる)は年間合計2270億ドルに達し農場利益の平均20%を占めました [参考図11]。[3] 

これらの大規模な農業補助金は現在非常に後退的な方法で分配されており、それはその大半が大農場とアグリビジネスに提供されより小規模な農場営業をおろそかにしていることを意味します。主な例はEUの共通農業政策ですが、それはヨーロッパの農業生産者のために公正な生活水準を保障することを意味します。現実には直接的収入援助の80%あたりが最も裕福な20%の農場の懐に入ります - それは主に大地主とアグリビジネス企業です。[4]

EUは補助金の受取人を公表しませんが、監視機関によるとヨーロッパ全体で2010年少なくとも100万ユーロ(13億ドル)以上が1130の支払いを通して大農場に提供されました。[5] CAPによる農場補助金は年間およそ550億ユーロ(740億ドル)、EUの年間予算総額の40%以上を占めますが、[6] 農業セクターはヨーロッパ全体で2%以下の雇用を占めるに過ぎません。その状況は、僅か38%の農場のみが政府の援助を受け;2011年これらの農場のトップ10%が全補助金の75%を受け取ったアメリカに似ています。[7] 2770億ドルが1995年から2011年までの間補助金として支払われましたが、アメリカの農業者の62%が補助金支払いをまったく受けませんでした[表5参照]。[8] 

競争のなかで悪戦苦闘する小規模農家は、彼らを破産に追い込む支払い不可能な負債をしばしば抱え込み、その結果彼らの土地は最も裕福な大農業者の土地に整理統合されます。ヨーロッパでは1999年だけで20万人の農業者が農業を諦めました。[9] ユーロスタットが発表した調査によると、EUは2003年から2010年までの間に300万人の農場を失いました。[10] 地方の家族規模の小規模農業を援助するための政府および国際機関の政治的意思の欠落の結果として主に、ヨーロッパ全体で恐らく1日1000以上の農場が消え続けています。[11]

同じようにアメリカでは1997年から2002年の5年間で2000エーカー以下の農場が9万以上失われ、その一方で2000エーカー以上の農場は3600エーカー以上拡大しました。[12] それにもかかわらず、小規模農場は農村経済の貴重な部分であり続け多くのOECD諸国において大多数の農業労働者を雇用し大量の農産物を生産しています。これは、高度に機械化された資本集約型農業営業を支持する農業支援プログラムにおいて永続的な敗者であるにもかかわらずです。

家族経営農場の閉鎖、ならびに土地、資源および生産の集中によってもたらされた社会問題にもかかわらず、多くの農業補助金は環境破壊をも激化させました。OECDから補助金を受ける生産および消費の産業モデルは集中的なエネルギー使用に基づいており、また外部資本および化学物質投入に大変依存しています。これには多くの場合、土壌侵食、塩類化、農薬汚染、窒素を多量に含んだ農業排水による汚染、そして天然資源の過剰使用などの環境劣化が付随して起こります。それはまた、農業、畜産業および漁業によって放出される温室効果ガス排出量の殆どの原因でもあります。[13] 工業型農業への大規模な支援レベルを持って、生態学的枯渇の代償は大部分が市場の外にかかります。

グローバル・サウスにおける影響 

欧州連合および米国における補助金の主な悪影響の一つは、とうもろこし、麦または大豆などの「換金作物」の過剰生産を誘発するためそれらの莫大量が国際商品市場で人為的な低価格で売られることです。不公平な取引規則によってさらに制約を受けた発展途上国の小規模農家は、地方の市場に溢れる補助金を受けた富裕国からの輸入品より安い農作物を生産することがますますできなくなります。このいわゆる「食物投げ捨て」は - 余剰が生産コスト以下で売られる時 - 人為的な低価格に打ち勝てず多くの場合生活の糧を失う地元の農家の営みを蝕みます。それは、米国および欧州などの大規模農業者の市場占有率をさらに増大します。

近年、先進諸国の多くは、途上国の食料安全保障への農業補助金の影響の度合いを削減することへのいくつかのステップをとっています。しかしながら補助金はいまだ人為的に安い輸出を引き起こし、グローバル・サウスの小規模農業者に多大な害を与えています。[14] 例えば、農業アナリスト ジャック・ベルテロは、世界市場で売られるEUの畜産物は平均2006年から2008年までの期間その輸出の3分の1に相当する補助金を受けたことを明示しています。[15] これは、生産品の世界市場価格を低下させ、サウスの生産者の所得を低下させることによって彼らに被害を与え、地元の市場を混乱させ輸出業者を締めだします。ヨーロッパの牛乳投げ捨てだけでも、その大多数が貧困化した小規模農家である最高9億人と推測される酪農家に被害を与えることが可能です。[16]

近年、世界貿易機構(WTO)における交渉は、農業支払交付金の分類システムを導入することによって、取引を歪め投げ捨てをもたらす農業補助金を削減することに特に集中しています。しかしながら富裕国は、例え過剰生産促進によってサウスの農業者に被害を与え続ける場合でも、支払交付金の多くを「許容可能」として再分類します。[17]WTO協定はまた、海外市場への小規模農業者の生産物輸出の障壁として機能する、農産物への高い関税の存続を富裕国に許してきました。さらには、世界中の小規模農業における深刻な危機は、途上国の関税をさらに削減し、富裕国からの補助金を受け人為的に安価な農作物から農業者を保護することを許さない、二国間および地域的自由貿易協定に関連します[この報告書のセクション10 関税を参照]。

合わせて、不当なOECDの補助金と自由貿易協定は、サウスで収入および雇用の損失をもたらし、小規模農業者が土地を手放し仕事を求めて都市部に向かうため、多くの途上国で「農村部からの集団移動」の原因の一つとなっています。これらの移住者の大多数は通常最終的に都市部のスラムコミュニティに行き着き、多くの場合経済的または社会的保障が皆無の貧困状態で生活しています。[18] 要約すると、不公平な貿易システムを永続させ世界の最も貧しい生産者の発展の機会を蝕む富裕国の補助金システムは、最も深刻な環境劣化の根本原因の一つです。明らかに、不当で持続不可能な農業モデル存続のためにOECD諸国が何十億ドルもを費やすシステムには根本的改革が必要です。

補助金システム徹底改革

途上国政府はまた幾分かの経済的支援を農業セクターに、特に新興国において提供していますが、これらの補助金はOECDの平均に比べいまだ比較的低いままです[注釈参照]。[19] 殆どの途上国は先進国と同じように生産者を保護するために同等の財源やWTO交渉内での柔軟性を待っていません。

従って、補助金改革努力においてはOECD諸国に狙いをつけることを最優先すべきです。特に、農業支援が最高レベルに達しその大部分が最も豊かな農業者および最大アグリ企業の棚ぼた式利益になるところの欧州連合と米国においてそうあるべきです。特に、過剰生産と人為的に安価な農産物の輸出を促進するこれらの補助金を廃止することは、食物の投げ捨てを止め途上国の農村経済を著しく活性化しますが、それによって収入増大と食料安全保障の改善をもたらすでしょう。

これらの「悪い」補助金を廃止することは、より価値のある目標のために利用可能な政府の資源を相当に解放するでしょう。Green Scissorsキャンペーンの推定によると、米国だけでもアグリビジネスの企業福祉に無駄遣いされ、米農業者の大多数派のニーズに取り組むことができない農業補助金の削減によって年間110億ドルを確保できるでしょう。[20] もしOECD諸国全体の国内補助金レベルが平均50%削減されるなら、1870億ドルを政府が募り、発展途上国の食料安全保障を拡大できるでしょう[下記を参照]。

しかしながら、農業補助金自体が問題なのではありません。ノースおよびサウスのあらゆる場所で小規模農家は食料生産および農村発展のために公共セクターからの支援を必要とします。これらの「良い」補助金は、小規模農業者とアグロエコロジー的農業経営への援助の残りを向け直すことによってOECD諸国で増大されるべきです。これらの支払いをアグリビジネス企業から向け直し再分配することは、農業セクター内の雇用を促進し、家族経営農業者を土地に留めることを助け、活気に満ちた農村経済を支援し、土壌保全を援助し、そして緊急に必要とされる21世紀の農業の現実を反映した持続可能な食料システムに移行することを支持します。

最終的に、補助金改革は農業における危機解決への答えのごく一部であり、世界の食料システムへのより幅広い改革がそれに付随せねばなりません。革新的な農業団体によってキャンペーンが行われているように、「食料主権」の枠組みに応じたより公平な地域的および世界的貿易協定を確立することが緊急に必要です。[21] 政府にとっての目標は、より高レベルの食料自給率の確立とOECD諸国およびグローバル・サウス双方における輸入への依存の削減であるべきです。小規模農業者の中心的要求の一つは農作物の信頼できる公平な価格ですが、生産を規制し農業者のために商品価格を上げることを促進するために供給管理政策の広い実施をそれは必要とします。さらに、農業セクター、特に小規模農業者にとっての将来的雇用機会の多様化および改善を政策が狙うべきOECD諸国全体で、農村および農業発展の目標が付加的に支援される必要があります。[22] 

どれだけの歳入が動員され得るか

OECDの補助金の著しい割合が最終的に大きなアグリ企業および工業型農業経営への支援に費やされることを考慮すると、現在の国内補助金レベルの大幅な削減が必要です。これらの削減は最低限、過剰生産と途上国への人為的に安価な農作物の輸出を促進する補助金を廃止するはずです(隠れた間接的補助金を含む)。

OECD諸国全体で平均50%の農業補助金削減は1870億ドルを調達できますが、それは代わりにグローバル・サウスでの貧困の取り組みと食料安全保障拡大のために利用され得ます。残りの補助金は、食料主権の原理に基づく農業のより幅広い改革と並んで、小規模生産者とアグロエコロジー的農業経営を支援するために向け直されねばなりません。   

OECD農業支援総計50%削減=年間1870億ドル[注釈参照][23]

農場補助金体制の修復

1995年の世界貿易機構協定の開始時において農業が含まれて以来補助金は常に貿易交渉の主要な障害となってきました。農業に関する協定(AoA)は小規模農業者のための関税保護を削減するかたわら、途上国が賄うことのできない莫大な補助金を富裕国が自国の農業者に払い続けることを許していることで市民社会団体に批判されてきました。事実、AoAは、農産物市場で途上国が既に直面していた不利な状況や不平等な競争条件を固定させました。実際には自由貿易の障壁として機能すると考慮される補助金の持続を巡ったその後の交渉において、欧州連合と米国間および双方に対して激しい論争がされてきました。

2001年の貿易に関する会議ドーハ「開発」ラウンドの開始に続いて、世界では30億人近くの人々が1日2ドル以下の生活を強いられるかたわら、ヨーロッパの平均的な牛はそれ以上の補助金を受けているというよく知られた主張を持って多くのキャンペーナーは補助金問題に集中しました。[24] 2003年カンクン閣僚会議においてブラジル、インドおよび中国を含んだ世界で最も重要な農業生産国および輸出国の数カ国によって率いられた新たな「G21」(21カ国グループ)が、米国、欧州連合および日本における農業補助金の段階的廃止を要求しました。[25]

特に米国は、補助金削減に乗り気でなかっただけでなく、国内の利害関係者を満足させるために農業保護を拡大し続けました - 事実、先行した2002年米国農業法において一部の農産物への補助金をおよそ倍にし、[26]そして2008年、5年間の補助金プログラムにおいてそれらを再び増大しました。[27] 米国および欧州連合双方の補助金レベルはそれ以来、特に2006年後減少しました。食料価格の世界的上昇を持って補助金レベルは、農業者への支援の一部が低価格に結びついている国々では低下しましたが、それでも総補助金レベルは殆どのOECD諸国にとってかなり高いままあり続けます。

農産物貿易における「ボクシングマッチ」を廃止する

WTO閣僚会議における「補助金経済大国」のお気に入りの戦術は、全体的な支援を大幅に削減するよりむしろ許された農業支払交付金のカテゴリーに従って補助金を再定義すること(イカサマゲーム「補助金を隠せ」)です。[28]  貿易または生産の歪みを最小限にとどめることを意図した - グリーン・カテゴリー交付金は、WTOの補助金予算制限から免除されたままであり、現在米国の補助金の10分の9、[29] 欧州連合において過去最高額の補助金を構成します。[30] それにもかかわらず多くの専門家は、グリーン・カテゴリー交付金がその巨大さゆえ、そしてしばしば最も生産性の高い大農場への集中ゆえ、貿易を歪め余剰を引き起こす効果を持ち続けると意義を唱えています。[31] 例えば欧州連合は、WTO交渉を通して補助金を歪めている貿易を80%削減し、農産物輸出補助金のすべてを廃止すると申しでたかもしれませんが、ヨーロッパの小麦製品の投げ捨て輸出価格を可能にする膨大レベルの国内支援をそれはいまだEU農業者に提供しています。[32]

従ってWTOは明らかに、それ自体が農業補助金の意味ある削減を達成する某体となることはなさそうです。補助金削減の合意への失敗は、ドーハ・ラウンド開始以来2008年7月のジュネーブ会議の決裂を含んだすべてのWTO交渉の行き詰まりの主な理由でした。[33] 問題は、WTOにおける欧州連合と米国の交渉ポジションに直接的影響を与える強力な「Big Ag」ロビーにチャレンジする政治家が僅かである一方、OECD諸国において国内農業プログラムが受ける相当な政治的支援です。ワシントンとブラッセルを基点とした何千人というロビーイストはしばしば議会議員や立法者の数を超え、多国籍企業の利益をサウスの貧困者の生活より優先します。

Big Agの愚かさ

断続する広範囲な補助金改革プロセスにもかかわらず、小規模家族経営農場の維持とより幅広い公益促進から補助プログラムを妨げる特権的利害関係者を、欧州連合と米国の政策立案者は有利にし続けます。運動団体によると、アメリカの補助金は、農場と家族営業の牧場のためのセーフティネットとして機能できないかたわらトウモロコシ、大豆、米、綿および小麦のプランテーション規模の生産支援のためにいまだ採用されています。[34] トレード・キャンペーナーはまた、改革された共通農業政策(CAP)への欧州委員会の提案を、ヨーロッパの開発義務に関する言及をすべて省いていることで批判しています。[35] CAP改革に関する長期的討論においてその外部の側面は、世界の貧困と食糧不安の状況へのその強い影響力にもかかわらず最低限議論されるだけです。[36]

農業補助金は、不公平な貿易、ならびに投入集約型および輸出主導型の工業型生産者を支持する政府の援助の不平等な再分配の一番の例です。これらの補助金を徹底的に向け直すことはもし世界が貧困者に利益をもたらし環境を保護することに真剣であるなら緊急の優先事項です。無数の人々の仕事を犠牲にしているグローバル経済危機の状況下で最も破壊的なアグリ企業および最も裕福な地主に税納者のお金を引き渡し続けることは経済的にも道徳的にも道理に合いません。

OECD諸国での意味のある補助金削減は、国際的開発目標充足への主要なステップを記しより環境的に持続可能な農業モデルに著しく貢献することが可能です。しかしこれは、政府がより小規模なより地方化された再生的農業モデルを国内および海外双方で強化する方向へ国内支援の残った部分を向け直すことによってのみ起こり得ます。そのような補助金システムの根本的改革は、広範な分野にわたる市民社会団体、革新的農業団体および懸念する政治家からの大規模な圧力なくして起こることはなさそうです。


ボックス14:農業の新時代?

以下は「食糧と開発のための政策研究所」による「食糧第一 背景説明」2008年夏Vol 14, No 2 からの直接抜粋です。この記事は、パン・ノース・アメリカの上級科学者そしてthe Global Report of the IAASTDの筆頭著者であるマルチャ・イシイ-エイテマンによるものです。全背景説明は以下のリンクからの抜粋です:<www.foodfirst.org>

2008年4月7日メディアの見出しが穀物備蓄量低下、食料価格急上昇、そして食糧暴動に集中すると同時に、世界食糧システムの全体に浸透した問題への解決策を緊急に提案する国連報告書を採択するために、61カ国から代表者が南アフリカ ヨハネスバーグに集まりました。開発のための農業科学技術の国際的検証(IAASTD)が質問しました:根強い貧困および飢餓の克服、公平で持続可能な開発の達成、そして環境危機を目前にして生産的で柔軟な農業維持のために私たちはどうすべきでしょうか。

国連環境計画、食糧農業機関、そして開発計画;ユネスコ;地球環境ファシリティ;そして世界銀行がスポンサーとなったIAASTDの研究は、世界農業、飢餓、貧困、パワーおよび影響の絡まった問題を詳細に調査した、400人以上の専門家による4年間の取り組みを提示しています。彼らの調査結果は従来の農業制度にショックウェーブを与えました。

農業革命への呼びかけ

「平常通り営業などとんでもない」とIAASTD ディレクター ロバート・ワトソンは言明し、世界食料農業システムの徹底的改革への呼びかけに同調しました。58カ国の政府によって是認され2008年4月15日世界的に発表された最終報告書の結論によると工業型農業は人類が生存するために拠り所とする天然資源を劣化し、現在水、エネルギーおよび気候安全保障を脅かしています。遺伝子組み換え作物を含んだ単純な技術的弥縫策への断続的依存は、根強い飢餓削減への解決法とならず環境問題および貧困を増加させる可能性があることを報告書は警告しています。それはまた、公共政策への多国籍アグリビジネスの不当な影響と世界人口の半分以上を栄養失調のままおき去りにした不公平な世界貿易政策を批判しました。

IAASTD報告書は、方向転換する選択を私たちが持つことを認めました。小規模農業セクターの強化、アグロエコロジー的農業への投資拡大、そして公平な国際貿易枠組み導入のための政策を再検討することによって現在の生産レベルを維持する一方で、より社会的および生態学的に柔軟なシステムを確立できます。報告書の著者たちは、地元と先住民の知識と革新という不可欠な貢献を取り入れ公平で参加型意思決定プロセスを迎え入れるために、農業研究、拡張および教育を再構築することを提言しました。

これは、保護されるべき環境に優しい小規模農業が、重要な生態学的および社会的機能に貢献すること、そして国と国民が食料と農業政策を民主的に決定する権利を持つことを認めた初めての独立した世界的検証です。

食料主権:食料危機への答え

今日の世界的食料危機は数多くの要因によって激化されてきました:食用作物からアグロ燃料生産への大規模な転換、商品投機の広がりによって駆り立てられる価格変動性、食習慣の変化、そして天候に関連する生産品不足。しかしながらIAASTDによって実証されているように、今日の危機のより深い根源は、政府が何十年も小規模農業セクターを疎かにしてきたこと、極めて不公平な貿易規則、そしてグローバル・サウス諸国へ余剰食料を地元の生産コスト以下の価格で投げ捨てるノースの政府の活動にあります。

これらの政策は、環境を破壊する工業型農業活動への強い依存と合わせて、世界中の農村部における農業コミュニティの破壊、彼らの食料生産および購入能力の弱体化、そして環境汚染や水の枯渇の原因となっています。国内および国家間の構造的不平等の巻き返し、農村部コミュニティの資源へのアクセスとコントロールの拡大、農業組織の強化、より公平で透明性のある貿易協定の構築、そして政策形成および意思決定プロセスへの地元の参加拡大を通して、地元および国家食料主権への道を整え始めることができます。

食料安全保証を確実にし食料主権を承認するためには世界の小規模生産者の制度的排除の撤廃が必要であると報告書は結論付けています。

不都合な真実

IAASTDは共通ガバナンスにおける大胆な実験の先行設定でした。市民社会団体(政府および民間セクターの代表者と併せて)は報告書の作成、ならびに監督およびガバナンスの提供に関与しました。政府および多国籍企業の単独活動だけでは幅広い社会目標充足に成功しないことを歴史は示してきており、政府間プロセスへの市民社会による活発な参加が21世紀のチャレンジ充足にとって不可欠なことをIAASTDの成功は証明しました。

IAASTD報告書によって提案された徹底的な転換は現状にチャレンジします。シンジェンタはIAASTDプロセス最終段階において、彼らの合成農薬および遺伝子組み換え製品が十分に評価されなかったと苦情を訴え立ち去りました。米国およびオーストラリア政府は飢餓と貧困緩和のために殆どなにもしないかたわら、社会的・環境的悪影響をもたらした彼らの貿易自由化政策のために特に厳しく批判されました。

米国、オーストラリアおよびカナダ3国だけが報告書の承認を拒みました。気候危機に関する報告書のように、IAASTDの調査結果は工業型農業における権威者および世界の経済大国にとって「不都合な真実」として考慮されることが考えられます。

警戒すべき環境的変動、そして過酷な貧困が原因で起こる世界的な社会動乱の双方がかなりの脅威を突きつける現在において、アメリカ政府、農薬貿易協会 クロップライフおよび既存のシステムの受益者は変革に対して声高に反論し続けます。

詳細は以下のリンクから: <www.panna.org/jt/agAssessment>

全IAASTD文書は以下のリンクから: <www.agassessment.org>


さらに知り参加しよう 

Capreform.eu: A sister project to farmsubsidy.org, working to bring greater transparency and accountability to the Common Agricultural Policy. <www.capreform.eu>

Farmsubsidy.org: With the European Union spending around €55bn a year on farm subsidies, this website helps people find out who gets what, and why. <www.farmsubsidy.org>

Food Rebellions - Crisis and the Hunger for Justice: A book by Eric Holt-Giminez and Raj Patel on the real story behind the world food crisis and what we can do about it, published by Pambazuka Press, 2009.

The Global Food Economy - The Battle for the Future of Farming:  A book by Tony Weis that examines the contradictions of the current food economy, how such a system came about, and how it is being enforced by the WTO. Published by Zed Books, 2007.

Global Subsidies Initiative: Putting a spotlight on subsidies - transfers of public money to private interests - and how they undermine efforts to put the world economy on a path toward sustainable development. <www.iisd.org/gsi>

Green Scissors 2011: A coalition of environmental, taxpayer and consumer groups identify US government subsidies that are damaging to the environment and waste taxpayer dollars.www.greenscissors.com

‘Growing a Better Future: Food Justice in a Resource Constrained World': A report published in May 2011 by Oxfam to launch their new campaign with a simple message: that another food system is possible. <www.oxfam.org/en/grow/reports/growing-better-future>

IAASTD: A three-year collaborative effort (2005-2007) that assessed agricultural knowledge, science and technology for development, with respect to meeting development and sustainability goals of reducing hunger and poverty, improving nutrition, health and rural livelihoods, and facilitating social and environmental sustainability. <www.agassessment.org>

International Centre for Trade and Sustainable Development (ICTSD): A Geneva-based organisation with a programme on agricultural trade and sustainable development that seeks to promote food security, equity and environmental sustainability in agricultural trade. <www.ictsd.org/programmes/agriculture>

Institute for Agriculture and Trade Policy (IATP): A think-tank and campaign organisation based in Minnesota, U.S., that works locally and globally at the intersection of policy and practice to ensure fair and sustainable food, farm and trade systems. <www.iatp.org>

Just Trade?! An NGO project that advocates for greater policy coherence between EU development and trade policy, with a view to promoting equitable and sustainable development. <www.just-trade.org>

National Family Farm Coalition: A non-profit organisation that represents US family farm and rural groups to secure a sustainable, economically just, healthy, safe and secure food and farm system. <www.nffc.net>

Reform the CAP: Another resource for all those interested in reforming the EU's Common Agricultural Policy, helping to foster a better understanding of what is at stake and how to shape the future CAP. <www.reformthecap.eu>

The UK Food Group: The principal UK network for non-governmental organisations (NGOs) working on global food and agriculture issues, holding a vision of a more just, sustainable and fairer food system in which hunger has been eradicated, equity realised and the environment restored. <www.ukfg.org.uk>

US Farm Subsidy Database: Mapping the issue of skewed pay-outs to America's largest and richest farms, by the Environmental Working Group. <www.farm.ewg.org>


Notes:

[1] Note: according to the Food and Agriculture Organisation of the United Nations, 925 were classified as hungry in 2011. But an unparalleled number of severe food shortages has added 43 million to this figure in 2012.

[2] International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development,Agriculture at a Crossroads: Synthesis Report, United Nations, Washington D.C., 2009.

[3] OECD, Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2011: OECD Countries and Emerging Economies, September 2011.

[4] Philippe Legrain, ‘Beyond CAP: Why the EU Budget Needs Reform', The Lisbon Council e-brief, Issue 09, 2010, <www.lisboncouncil.net>

[5] Farmsubsidy.org, 2011 Farm Subsidy Data Harvest: Millionaires and Missing Money, 10th May 2011, accessed October 2011, <www.farmsubsidy.org>

[6] Farmsubsidy.org, Let The Sunshine In, 23rd September 2011, accessed October 2011.

[7] Environmental Working Group, 2012 Farm Subsidy Database, The United States Summary Information, accessed August 2012, <www.farm.ewg.org>

[8] Ibid. See also ‘Farms Getting Government Payments, By State, according to the 2007 USDA Census of Agriculture', compiled from 2007 Census of Agriculture, April 2010, <www.farm.ewg.org>

[9] John Vidal, ‘Global trade focuses on exodus from the land', The Guardian, 28th February 2001.

[10] Eurostat Communique de presse, ‘Le nombre d'exploitations agricoles a diminué de 20% dans l'UE27 entre 2003 et 2010', 11 Octobre 2011, <www.epp.eurostat.ec.europa.eu>

[11] Eric Holt-Giminez and Raj Patel, Food Rebellions: Crisis and the Hunger for Justice, Pambazuka Press, 2009, p. 66.

[12] Mark Ritchie, Sophia Murphy and Mary Beth Lake, United States Dumping on World Agricultural Markets: February 2004 Update, Cancun Series Paper no. 1, Minneapolis: Institute for Agriculture and Trade Policy.

[13] UK Food Group, Securing future food: towards ecological food provision, January 2010, pp. 4-8.

[14] International Centre for Trade and Sustainable Development (ICTSD), Ensuring trade policy

supports food security goals, ICTSD Programme on Agricultural Trade and Sustainable Development, November 2009.

[15] Jaques Berthelot, ‘The EU-15 dumping of animal products on average from 2006 to 2008', Solidarité, February 2011. Quoted in Thomas Fritz, Globalising Hunger: Food security and the EU's Common Agricultural Policy, Transnational Institute et al, November 2011, section 4.3.

[16] Ibid.

[17] International Centre for Trade and Sustainable Development (ICTSD), Agricultural Subsidies in the WTO Green Box: Ensuring Coherence with Sustainable Development Goals, Information note no. 16th September 2009.

[18] Tony Weiss, The Global Food Economy: The Battle for the Future of Farming, Zed books, 2007, pp. 24-28.

[19] Of the emerging economies, Brazil, South Africa and Ukraine generally support agriculture at levels well below the OECD average, while support in China is approaching the OECD average. In Russia, farm support now exceeds the OECD average. However, support is generally much lower in other developing countries. See: OECD, Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2011: OECD Countries and Emerging Economies, September 2011.

[20] Figures represent an average of cuts over the period 2012-2016. See: Public Citizen, the Heartland Institute, Friends of the Earth, and Taxpayers for Common Sense, Green Scissors 2011: Cutting Wasteful and Environmentally Harmful Spending, August 2011, pp. 16-17. 

[21] Peoples' Food Sovereignty Statement, La Via Campesina and the People's Food Sovereignty Network, 2006, <www.nyeleni.org/IMG/pdf/Peoples_Food_Sovereignty_Statement.pdf>

[22] See European Coordination Via Campesina (the European arm of the international small farmers movement, La Via Campesina), <www.eurovia.org/?lang=en>

[23] Note: The estimated $374bn of annual agricultural subsidies in OECD countries includes a complex array of supports, such as direct payments to producers, transfers to consumers from tax payers, support for general services to agriculture, marketing, promotion and other types of less tangible subsidies. It is beyond the scope of this report to specify which of these individual subsidies should be reduced and which should be maintained. Such decisions should be the subject of national dialogue according to individual country needs and priorities, and should not be confined to the undemocratic negotiations within the WTO.

[24] Penny Fowler, Milking the CAP: How Europe's dairy regime is devastating livelihoods in the developing world, Oxfam Briefing Paper 34, December 2002.

[25] Timothy A. Wise. The Paradox of Agricultural Subsidies: Measurement Issues, Agricultural Dumping, and Policy Reform, Global Development and Environment Institute Working Paper No. 04-02, May 2004.

[26] Sabyasachi Mitra, ‘US Farm Bill 2002: Its Implications for World Agricultural Markets', International Development Economics Association (IDEAS), 17th May 2002.

[27] The Economist, ‘The farm bill: A harvest of disgrace', Washington D.C., 22nd May 2008.  

[28] Peter Rosset, Food is Different: Why We Must Get the WTO Out of Agriculture, Zed books, 2006, pp. 84-88.

[29] ICTSD, ‘Farm Subsidies: Ballooning US Food Aid Pushes Total Support to New High', 7th September 2011.

[30] ICTSD, ‘EU Halves Production-Linked Farm Subsidies, But Delinked Support Jumps', 26th January 2011.

[31] Grey, Clark, Shih and Associates, Green Box Mythology: The Decoupling Fraud, Study Prepared for Dairy Farmers of Canada, June 2006.

[32] Thomas Fritz, Globalising Hunger, op cit, pp. 46-48.

[33] Martin Khor, ‘The July failure of the WTO talks: Cause of collapse and prospects of revival', Third World Resurgence no. 215, July 2008.

[34] Environmental Working Group, ‘Despite Claims of Reform, Subsidy Band Marches On Non-farmers, Urbanites Still Receiving Farm Subsidies', Press Release, 23rd June 2011, accessed October 2011, <www.ewg.org>; Ben Lilliston, 'What's at Stake in the 2012 Farm Bill?', Institute for Agriculture and Trade Policy, 28th March 2012, <www.iatp.org>

[35] Daan Bauwens, Agriculture Proposals ‘Failing Development', Inter Press News, Brussels, 19th October 2011.

[36] Thomas Fritz, Globalising Hunger, op cit, p. 4.


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