分かち合いと共同消費の真の可能性を実現するためには、支配的経済モデル、特に現代資本主義社会固有の特徴である、行きすぎた消費文化および不平等の拡大にチャレンジする必要があります。
このインタビューは元来SharingLab.dkによって発表されたものです。
あなたの関心を引く、「分かち合いの経済」についての今日的議論は何ですか?そしてそれはなぜですか?
シェア・ザ・ワールズ・リゾースィズ(STWR)では、差し迫った社会的、環境的危機への取り組み方についての市民社会の討議、そして政治的問題の関係から特に、分かち合いの経済に関する論議の「分かち合い」の部分にさらにフォーカスを絞っています。この言葉はまだ明確に定義されていませんが、分かち合いの経済は一般的に民間部門での活動に関係しており、そしてまた、「commoning」や第三部門でのボランティアの取り組みをも含みます。しかしながら、共益のために一国の共有資源がどう分かち合われるべきかを最終的に公共政策が決定するにもかかわらず、この言葉は多くの場合、全体としての経済または政府の役割に関係を持ちません。そうしたわけで分かち合いの経済についての議論は、やや非政治的で、そもそもなぜ地球資源がそのように不平等に分配され、持続不可能なやり方で消費されているのかという重要な疑問から切り離される傾向があります。
分かち合いについてのより幅広い視野を持つことは、不平等と気候変動の根本的原因を認識することを可能にします。それは、主に、どのように私たちが世界資源を管理し、社会を組織化するかを長い間形取って来た、経済政策および外交政策の目的や政治的イデオロギーの結果なのです。例えば、1980年代以来、(市場の自由化、コモンズの民営化および公共圏の縮小に重点が置かれた)新自由主義の新自由主義のイデオロギーは、経済および政策立案を制覇して来ました。多くの場合この動向は、漸進的課税システムおよび社会保護や不可欠な公共サービスの普遍的提供など最も基本的で複雑な形態の経済的分かち合いを弱体化するだけでなく、解体さえしていることにも責任があります。同じ一連の新自由主義政策もまた、万人の利益のためにグローバル・コモンズを分かち合うグローバル・コモンズを分かち合うことが出来ない、商業化と気候変動を煽る、利潤志向および経済成長依存型の経済モデルの追求をもたらしました。
従って、STWRの関心を引く分かち合いの経済についての論議は、優勢的な経済モデル、特に、現代の資本主義社会固有の特徴である過度な消費文化および拡大する不平等に根本的にチャレンジするものです。民間部門に関しては例えば、地球の限りある天然資源をどのようにより公平に分かち合うべきかについての討論に、私たちは注目しています。それは、もしエコロジカル・フットプリントの公平な分担エコロジカル・フットプリントの公平な分担が可能にされるなら、消費レベルの大規模な削減を必然的に必要とします。これが、1992年の「地球サミット」およびアジェンダ21の発表以来、持続可能な開発の国際的討論の一部として正式な目標となって来た、「生産と消費の持続可能なパターン」を作り出す主要な役割を、共同消費が担うことが出来るところなのです。同じように、しかしながら公共セクターに関係して、何十年も前に世界人権宣言第25条に明確に述べられた、食糧、医療、住居および基本的な社会保護への保障されたアクセスを万人が持つ、真に分かち合う社会をどのように確立するかついての討論に、私たちは関心があります。長期に渡って保持されて来たにもかかわらず未達成なこれらの目標が、その試みにおいて最優先されない限り、(その最も幅広い意味に基づく)分かち合いの経済への移行が不可能なことは確かでしょう。
協力について「分かち合いの経済」から何を学ぶことが出来ますか?
世界中で「古い世界の殻の中に新たな世界を築く」ことを試みる多くの未来予示的代替策の中に協力活動はますます表現を見いだしています。競争や利益への必要性を通してだけでなく、真の協力のプロセスを通して、可能な限り最高の生産品をつくる欲求によって駆り立てられた、経済活動の革新的タイプがますます出現しています。例えば、知識のコモンプール財(Wikipedia)やコンピューティング・コード(Mozilla)、そして製造のためのデザイン(Wikispeed)の発達に貢献する、拡大する協力者のコミュニティがあります。そしてこれらの活動は、社会の価値がどう生みだされ得るかについての私たちの理解を革命化しています。これらの分かち合い志向の生産および消費モデルはまた、公共圏と私圏を釣り合わせることが出来る、より効果的なコモンズ部門の確立に重要になると考えられます。
もっと概括的に言うと、21世紀のより平等で持続可能な世界を創造するために、個人や組織だけでなく政府もが共に取り組むやり方において、協力が中心的特徴になることは確実です。本当に長い間、経済システムの進化を誤り導いて来た、過剰評価された「強者の生存」の観念に基づく活動 - 競争は、多くの面で協力の逆です。協力よりむしろ競争を優先する政策は何十年もの間、世界人口の最も裕福な20%が世界の自然資源の80%を消費していることに責任がある、非常に不平等なグローバル経済の創造をもたらしました。従って、共益のためのどのような真の協力のプロセスも、競争に基づいた経済システムを支持する過度な商業化および自由市場活動への対抗手段として考えられます。人類共有の富および資源管理への今日の不公正で持続不可能なアプローチを最終的に置き換えるべき新しい社会的、経済的取り決めの実現への鍵を、実に、協力が握っているのです。
しかし、世界の政府の間でのさらに効果的な協力形態の中で最も緊急に必要とされるのは、グローバル・レベルでの共同活動です。国連が確立されたのが何十年も昔にかかわらず(議論の余地があるにしても、それは現在、協力を促進する最も重要な機関です)、解決困難な国際問題の取り組みにおいて、国々はうまく協力し合うことに失敗しています - なぜなら彼らは主に企業を代表して、土地、天然資源、そして商業市場のより大きな報酬のための猛烈な競争に集中し続けているからです。その結果、二酸化炭素排出を吸収する地球の限られた収容力をどのように割り当てるか、あるいは飢餓や生命を脅かす貧困を防ぐことが出来るように、どのように世界の財源を分配すべきかについて国々は合意できないでいます。明らかに、これらの差し迫ったグローバル問題への取り組みにおいて担うべき中心的役割を、政府間のさらに効果的な協力形態は持っています。そしてそれがなぜ、協力の原理および実践が社会の全レベルでさらに浸透し、拡大され続けることがそのように重要なのかということです。
都市コミュニティに権限を与えるために、どのように「分かち合いの経済」に適用することができますか?
技術やリソースへのより良いアクセスを保証するためだけでなく、相互援助や支援を強化するためにも、都心の排除されたコミュニティと共に取り組む社会的企業の多くの例があります。例えば、 Food Cycleは、コミュニティの構築ために取り組む一方で、残飯や食糧貧困を活動的に削減するイギリスの多くの分かち合いの経済イニシアチブのひとつにすぎません。イギリスだけで約100万人が間もなく緊急食糧援助に依存することになるだろうと推定されるこの時、フードバンク・ネットワークも分かち合いを促進しています。どの富裕国にでも飢えが存在するということは嘆かわしいことですが、主に発展途上国のますます混雑する都市部のスラム で日々飢えている8億500万人 の人々と比較すると、この統計は色褪せて見えます。
個人間の分かち合いの形態は、人々が資源にアクセスし、消費レベルを削減し、コミュニティを強化することを可能にすることにおいて担うべき役割を持ちますが、それらは、極めて基本的なニーズでさえ確保することに苦闘する人々に、真の権限付与(エンパワーメント)をもたらすには十分ではありません。豊かな世界の中の飢えの脅威など社会的、経済的に途方もないチャレンジを考慮すると、排除されたコミュニティに真に権限を与えることができる分かち合いの経済を築くための最良の方法は、分かち合いについての討論を現在支配する民間部門および第三部門の協力形態を超えることだとSTWRは論議します。これを達成するには、私たちが社会を組織化するやり方に関係して、分かち合いが何を意味するのについてさらに完全な理解が必要です。分かち合う社会の構築が目標とされるべきであり;それは、どのコミュニティであろうとすべての人が、環境の限界を超えることなく発展するために必要な物資およびサービスへのアクセスを保証することを、公共部門、民間部門およびコモンズ部門のすべてが目指す社会です。しかし、ヨーロッパ全体で断続する公共サービスへの支出削減および発展途上国に蔓延する極貧は、何ら意味のある形の分かち合いの原理を私たちの社会経済的システムが具現化することを、私たちが保証できないでいることを反映しています。
従って、都市部および農村部双方のコミュニティの人々にパワーを与える最も効果的な方法は恐らく、一般国民が、不平等の原因となる政策、法律および規則に影響を与え、日常生活に真の効果をもたらすことを可能にする、より大きな政治的参加を促進することです。この展望からコミュニティ・エンパワーメントは、貧困者や恵まれない人々に対して過度に打撃を与える福祉および公共サービス削減に反対するために動員することなど、一連のより幅広い分かち合い志向の政治的活動を含むかもしれません。それは、政府が社会保護を守り、医療、住居および教育へのアクセスを保証するための資金が利用可能となるように、企業や個人富裕層による租税回避を廃絶するための方策を支持することをも意味するかもしれません。そのような政府の政策措置は、共同消費だけに基づいた民間部門や第三部門の代替策より、遥かに効果的な共有資源の分かち合いの形態です。
革新的なオンライン・プラットフォームはまた、市民参加およびコミュニティ・エンパワーメントの直接的形態を増大させるためにも使われることが可能です。例えばDemocracyOSなど、デジタルの分かち合いの経済のツールは、分権化およびさらに民主的なガバナンスの形態を創造することによって、時代遅れの政治的システムを改革する可能性を持ちます。同じように、マイケル・ボーウェンの社会的知識経済提案は、特に地方でのコモンズ基盤の設定で起こるだろうように、情報、商品およびサービスが生み出されアクサセスされる方法を変革することによって、都市部のコミュニティ・エンパワーメントを促進できます。ジェレミー・リフキンによると、再生可能エネルギーの地方化された生産や分散製造の新様式を含んだ - 新たな分かち合い志向の生産プログラムはまた、世界中の個人やコミュニティにパワーを与え、第三次産業革命への道を整えることができます。
「分かち合いの経済」の将来は?
分かち合いは、大部分が民間部門の活動である様々な共同消費の形態だという限られた概念を超えて、分かち合いの経済の将来は拡大するでしょう。既に触れたように、商品やサービスのより持続可能な生産および消費様式への道を整えることを分かち合いの経済は促進できます。しかし、分かち合いの原理は、それ以上のものを包含しています;少なくとも、分かち合いが多くの霊的伝統の中心的教義だという理由、人間であることの真の意味を特徴づける不朽の原理としてそれが認識されねばなりません。従って、私たち皆が分かち合うことを知るべきひとつの人類とひとつの地球があるのだという、シンプルな霊的真実を具現化し反映する国家および国際システムを創造することが重要です。そうしない限り、許容可能な時間枠内での気候変動の緩和や極貧の根絶は不可能のまま残るでしょう。従って、これらの緊急の目標を達成するためには、分かち合いの経済をさらに広い視点から心に描き、国内および国家間双方で富、権力および資源を分かち合うために、政府と公共政策が担うべき中心的役割を認識せねばなりません。
より平等で持続可能な世界を構築するために必要な全体におよぶ解決策が、分かち合いの倫理および実践に基づいているということは特筆すべきです。例えばこれは、炭素排出を吸収する地球の収容量をどう割り当てるかについての国際的な気候変動の交渉の関係から明らかです。分かち合いのプロセスは、一人あたりの炭素排出を規制するための「制限と割り当て」および「収縮と収束」双方のモデルの中心となります。「公平な割り当て」のコンセプトは、環境的限界を越えることなく万人の基本的ニーズをどう充足すべきかについての討論を組み立てるためにますます適用されています。そして、人類の共同財産の原理のもと、南極と世界の海洋など特定のグローバル・コモンズを保護し共有するために、数多くの国際条約が既に存在します。
それがなぜ、経済的分かち合いおよび協力のためのより広い運動の一部として、分かち合いの経済および共同消費のさらに多くの支持者が、彼らの追求を考慮する必要があるのかということです。STWRでは、私たちの「分かち合いのためのグローバル・コール」のキャンペーンにおいて、多様な分野で取り組む人々の活動を支持する原理として分かち合いをより完全に理解する必要性を明瞭にしようと努めて来ました。このキャンペーンのための報告書、私たちの共通目標としての分かち合いの中で浮き彫りにされているように、分かち合いの原理は既に、社会正義、環境管理、世界平和および真の民主主義への多様な呼びかけの中心です。以下は、この報告書のエグゼクティブ・サマリーからの引用です:
「異なった国々の個人やオーガナイゼーションが、彼らの取り組みをより具体的な方法で同調させない限り(そのプロセスは既に進行中です)、業務平常通りを維持する、既得権益や定着した構造を乗り越えることは不可能なままとなるかもしれません。社会的、経済的および生態学的崩壊という最終的展望に私たちが直面する一方で、社会の再構築や21世紀の多くの危機への取り組みのための基礎的指針として分かち合いの原理を支持する、広範囲に渡ったグローバル・ムーブメントを確立することは何にもまして緊急を要します。これは最終的に、全世界のニーズに基づいた、基本的な人間的、生態学的価値観によって導かれた経済改革に影響を与えるという、私たちの最大の希望を象徴するかもしれません」
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